「障害者就労移行支援事業所を利用してみたいけど、どこがいいんだろう?」と悩んでいるあなたへ。
私も就労移行支援事業所の利用を検討している時は悩みましたが、何か所か見学・体験するうちに自分なりに選ぶ基準が分かってきました。ですから悩んでいる方はWEBサイトを見ているだけでなく、実際に足を運んでみると良いですよ。
また、当記事では選び方のポイントを5つ紹介していますので、これから障害者就労移行支援事業所を利用したいと思っている方は参考にしてください。
目次
障害者就労移行支援事業所の選び方のポイント
1.望む働き方に繋げることができそうか
今は昔と比べて多様な働き方が可能です。
- リモートワークや在宅ワークを認める企業が増えてきている
- インターネット上で自分で集客して仕事を請け負うことも可能な時代なので、自分のスキルを活かしてフリーランスになる選択肢もある
障害の特性上通勤が難しいという場合でも、今はスキルさえあれば在宅で仕事をすることができる時代です。
もし在宅やフリーランスでの仕事を希望するなら、IT系のスキルは必須になります。
であれば、Adobeソフトやプログラミングの勉強ができる就労移行支援事業所を選んだ方が就職に繋げることができますね。
【IT系スキルを勉強できる就労移行支援事業所】
上記2か所はIT系スキルを幅広く深く学ぶ環境が整っているだけに、比較的在宅やフリーランスでの就労実現に強い印象です。
- 会社員(公務員)orフリーランス
- 出社orリモートワークor在宅ワーク
今は「会社員」として「会社に出社する」だけが「働く」ことではありません。
自分がどんな働き方をしたいのか、どんな生き方をしていきたいのか、障害特性なども踏まえて考えると自分に合った就労移行支援事業所がきっと見つかりますよ。
中には会社員とフリーランスのどちらがいいのか悩んでいる方もいらっしゃるかもしれませんね。そういう時は見学に行った時に正直に話してみましょう。
私が見学に行った時は「フリーランスになりたい方のお手伝いをさせて頂いたことがある」とお話してくれた就労移行支援事業もありました。
2.希望する職種に合ったスキルを得られそうか
あなたはどんな職種で働くことを希望していますか?
一口に障害者就労移行支援事業所といってもそれぞれ特色があり、「得意な訓練内容」や「就職された方の職種の実績」が違います。
例えば、「アビリティーズジャスコ」は事務職に次いで販売・小売業へ就職された方の実績が多い事業所です。
これは接客応対、レジ操作、在庫管理など販売・小売業に就職する際に役立つ訓練が充実している事が大きいでしょう。
なので、接客業を希望されている方や販売・小売業に就職したいと思っている方にとっては良い環境ですが、逆にデザイナーやプログラマーなどの専門職で働きたいという方にはあまり向いていませんよね。
希望する職種が明確であれば、その職種に強い就労移行支援事業所を選ぶことができます。
「そうはいっても障害者雇用では一般雇用に比べて職種の幅が狭くて、あまり選べないよね?」と思ったあなた。
確かに、障害者雇用で一番多い求人は人事、総務などの事務職です。
特に地方は都会に比べて事務職以外の求人が少ない傾向があり、各障害者就労移行支援事業所の「職種別就職実績データ」を見ても事務職で就職されている方が多い傾向です。
しかし近年はプログラマーやシステムエンジニアなどのIT関連職、営業職の求人も増えてきています。
障がい者の就職・転職を支援する求人サイトウェブサーナの「職種による雇用状況」には以下のように書かれています。
事務職
人事、経理、総務など。幅広い業種の企業から募集があります。障がい者雇用において、最も多く採用されています。営業職
顧客への営業活動を行う職種です。メーカーや、商社に多い職種です。近年、増加傾向にある職種のひとつです。販売職
接客や顧客対応を行います。サービス系の業種の企業に多い職種です。研究開発関連職
商品開発や研究を行う職種です。メーカーや情報系の企業に多い職種です。生産技術関連職
メーカーなどで商品を生産する為の技術的業務を行う職種です。SE・PG・IT関連職
プログラマーやエンジニアなど、専門性が求められる職種です。現在では、事務職についで多く採用されています。
昔に比べて職種の幅は確実に広がっており、スキル次第で望む職種に就くことも可能です。
やってみたい職種があるなら、その職種で必要になるスキルを学べる就労移行支援事業を選ぶと良いでしょう。
また、スキルの勉強をする為の時間をどれだけ確保できるのかも確認しておくと良いです。
就労移行支援事業所によってはやることが全部決まっていて、自分がスキルアップしたい事の勉強に充てる時間が少ないこともあります。
もしあなたがまだ自分にどんな職種(仕事)が向いているのか分からない場合でも大丈夫です。
多くの事業所では企業実習を行っているので、どんな仕事が自分に向いているのか体験することができます。
3.就職の実績、就職後の定着率は高いかどうか
実績はその就労移行支援事業所の実力やサポート力を客観的にはかれるデータなので、ある程度は気にしておくと良いでしょう。
どんなデータを開示しているかは就労移行支援事業所によりますが、多い所だと下記のようなデータを開示しています。
- 未経験者の希望職種への就職成功率
- 職種別就職実績
- 障害別就職実績
- (年度別)就職者実績
- 就職先実績(企業名の公開)
- 就職後の職場定着率
1,2はどの事業所も事務職が多い傾向がありますが、中には接客・販売業や在宅の実績が多い所もあります。
3の「障害別就職実績」は「障害別就職実績=その障害を持っている人が多く通っている」と判断できます。
例えば、精神障害の方が多く通っている事業所は、少ない事業所よりも障害の特色を理解していると考えられます。
「できれば自分の障害をよく理解してくれる所にお世話になりたい」という時の判断材料になります。
特にチェックしておきたいのは、4の「就職者実績」と、6の「職場定着率」です。
就職者実績は事業所が開設したばかりでまだ就職活動をしている利用者がおらず、データがない場合もあります。しかし開設から何年も経っているのに就職者実績が低い場合、その事業所のサポート力を疑いますよね。
就職後の職場定着率も同様です。
例えば、就職後の職場定着率が70%の所と、90%の所があったとします。後者(90%)の方が会社との間に入って調整するのが上手いのではないかと考えるのが自然です。
せっかく就職できてもその後長く働くことが出来なければ意味がないので、職場定着率は気にしておきましょう。
やはり実績があった方がノウハウもあるでしょうし、心強いので最終的に実績が良い所を選びました。
4.スタッフや事業所の雰囲気との相性はいいか
就労移行支援事業所を利用できる期間は最長2年間です。ほとんどの方は1年程で就職しているそうですが、いずれにせよ長い期間通うことになります。
ですからスタッフや事業所の雰囲気が自分に合っているかどうかは非常に大事です(スタッフは人事異動などで変わる可能性もありますが)。
障害の特性によっては苦手に感じる人が通所している可能性もありますし、足に障害をお持ちの方が利用するには厳しい建物に事業所が入っているかもしれません。
見学・体験の時にエレベーターはあるか、トイレは使えそうかなど自分の障害特性に合わせて環境や設備をしっかりチェックしておきましょう。
途中で事業所を変えることも可能と聞いていますが、何度もコロコロ変えると役所に快く思われないようです。。(当たり前ですが)
それに途中で事業所を変えると、また新しい環境に慣れる所からやり直しになるので、あなたの負担も大きくなります。
「通ってみたもののどうしても合わない」という場合は無理することはありませんが、途中で事業所を変えるはめにならない方が良いですよね。
その為にもスタッフや事業所の雰囲気や設備などは見学・体験を通してしっかり確認しておきましょう。
5.妥協も必要
就労移行支援事業所を探していると、どこかしら妥協しなければならない点が出てきます。
例えば「訓練内容は良いが、事業所が遠い」とか「実績はまだ無いがスタッフとの相性や訓練内容も良さそう」などです。
メリットもあればデメリットもあるのが普通です。完璧に自分に合った事業所を見つけることはほぼ不可能なので、妥協できる点を見つけておきましょう。
そうすれば「どこも自分に合わない」といった最悪の事態を避けられますし、複数の事業所を比較して選びやすくなります。
私が妥協した体験談
これは私の場合ですが、一つの妥協した体験談として書かせて頂きます。
ちなみに私のスペックはこんな感じ。
- 聴覚障害(2級)、過労でうつ病になり退職し現在は寛解
- 一般企業で正社員として約10年の就労の経験あり
- 学生時代にMOSスペシャリストの資格取得済み
- プログラミング、HTML、CSSスキルあり(実務経験もある)
前職はプログラマーだったこともありPCスキルはまあまあありますし、10年近く働いていたのでビジネスマナーなどのスキルも身についています。
その為、ほとんどの事業所で用意されている訓練内容は簡単すぎると感じました。
なので見学の時に必ず「自分のレベルに合わせて勉強する内容を変えられるか」を確認しました。
「うちは決まったことをやってもらう」という事業所もありましたが、「会社に相談した上で柔軟に対応したい」という事業所があったので、最終的にはそこに通うことに決めました。
必ずしも私の希望が通る訳ではありませんが、少なくとも必ず決まった事をやらなければいけない事業所に通うよりは私にとって良いです。
私はPCスキルやビジネススキルは持っている反面、過労でうつ病になり会社を退職し、約2年ほど治療に専念していたのでブランクがあります。ほとんど家で過ごしていたので体力が落ちていますし、生活リズムも狂っています。
私が就労移行支援事業所を利用する大きなメリットはここにあります。
【私が事業所を利用する最大のメリット】
- 再就職のための体力を付けられる
- 生活リズムを整えることができる
- 働いていた頃の感覚を思い出せる
- 再就職のサポートをして貰える
- 再就職したあとフォローして貰える
なので、事業所で仕事のために必要なスキルを身に着けるという点は妥協しています。
今の私にとって一番大事なことは「生活リズムを整えて、働くための体力を付けること」だからです。
【まとめ】就労移行支援事業所の選び方のポイントは「自分が求めること」をはっきりさせること
就労移行支援事業所を選ぶ時のポイントを5つお話しました。
- その事業所に通うことで「望む働き方に繋げることができそうか」?
- その事業所に通うことで「希望する職種に合ったスキルを得られそうか」?
- その事業所の就職率や職場定着率は高いか?
- その事業所に長く通うことができそうか?
- 完璧に自分に合う所はないので、妥協する事も必要
簡単に言うと「その事業所を利用することで働くために必要な事を習得できるか」どうかです。
最終目標は就職し、長く働くことですよね。その為には「取得したいスキル」「克服しておきたい課題」に取り組める環境だと良いでしょう。
何をしたいのか、何をするべきなのかは人それぞれ、障害によっても様々です。
正解はありませんので、まずは気になった事業所に見学に行くところから始めてみてくださいね。
そして最低でも2~3か所は体験されることをおすすめします。1か所見ただけではよく分からなくても、比較することで気付くことが多いですよ。